旅ねずみのフランク

ねずみのフランクは旅で疲れていた。森の中を、飲まず食わずでずっときたからだ。

辺りが暗くなり、もう力尽きると思ったそのとき、廃屋が目の前に現れた。ねずみの気配がする。フランクは中に入り込み、絞り出すような声で「助けてください」と呼びかけた。

すると、恰幅のいい初老のねずみが出てきた。フランクが事情を話すと、初老のねずみは一家の食べ物をくれ、寝床も与えてくれた。困ったときはお互い様だ。その一言が何よりも身にしみた。

皆が再び寝静まるのを待つと、フランクは静かに寝床から這い出し、廃屋を出た。フランクの後ろで、飢えた猫が廃屋に入る気配がする。

フランクは森の中でずっと、猫に追われていたのだ。自分が助かるため、廃屋の家族を騙し、犠牲にすることを選んだ。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

フランクは押しつぶされそうな気持ちを振り払うように、森を全力で駆け抜けていった。