僕が飛んだ理由

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「あの、何見てるんですか」
僕は遠慮がちに聞いた。屋上のフェンス越しで弁当を食べているのは、違うクラスの知らない奴だ。
「いや、いつ落ちるかなって」
「止めないんですか」
「死にたい理由にケチつける筋合い俺にはないし」
彼のもりもり食べるお弁当は、肉中心の茶色い色彩だった。
「食う?」
「いや」
「最後の晩餐」
肉汁滴る唐揚げの匂いに引き寄せられ、僕はフェンスの内側に戻った。
「学校爆破すれば解決する?」
「しない」
「両親がいなくなれば済む話?」
「いや……」
食欲につられて、僕は答え始めていた。
「将来が不安で」
「もったいないな」
「馬鹿にしてる?」
彼はいった。
「生体サンプルは貴重なんだよ」
彼が指を鳴らすと、雷みたいに空が光った。気がつくと、目の前に宇宙船があった。
「どうせ死ぬならミトコンドリアとか調べさせて?人生保障するから」
「えー……」
こうして僕の内定が確定した。
SF
公開:18/07/18 10:59
更新:18/07/18 11:22
少し不思議 超有名ホワイト企業

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

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