草葉の陰

草葉の陰、というと、死後の世界を指すらしい。でも、本当に草葉の陰に隠れ、伏せているときは何と言えばいいのだろう。

私の使命はこの家の住人を監視すること。住人に見つからないよう、生い茂る草花を利用して静かに近づいた。見つかったら最後、殺されてしまう。

ここの住人は獰猛だ。食べられると見るや、同じ人間でも取って食う。今日も軽率なウサギが何匹か迷い込み、見つかった瞬間に殺されていた。

私は仲間の犠牲者をこれ以上出さないため、監視役となったのだ。しかし……。

「こんなところにいたのか」

後ろから男の声がした。瞬間、銃声が響く。身を翻そうとしたが遅かった。弾は胴体を撃ち抜き、私は助からないことを悟った。

「今日はウサギが大量だな」

力の抜けた私の体を、男が持ち上げて言った。草葉の陰の生者が、引きずり出されて死者になる。意識が消える寸前、そんな皮肉を思いついた。