転校生

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「俺ならばそうは描かない」
筆を握って首を振る。青とか、赤とか、黒とか、山吹とかさ。もっともっと色を散らすよ。窓からはカバが顔を出して、枝にはタコなんか頭足類がぶら下がっていても悪くない。
「オトナはさ、そういうのを求めているのだから」
クリムトは眉を顰めた。
「そうだよ。オトナはそんな俺たちの絵が好きなんだ」
そうすれば、いつまでも眺めていたい絵ですなんて、絵画としては最大級の誉め言葉が添えられる。クリムトは器用なんだけど要領が悪い。
「この前なんてさ、リレーの練習で前のヤツが転けたから、俺、その場で立ち止まったんだ。なんでか分かるか?」
クリムトは首をかしげた。
「あれはちょっと露骨だったかな」
俺は転校生のクリムトに小学生としての立ち振る舞いを教える。きっと俺たちは仲良くなる。こういう誰が見てもいい感じの絵を描いてしまう奴、ちょっと羨ましくもあるけれど、嫌いではないんだ。
青春
公開:18/07/17 20:38
更新:18/08/05 20:34

puzzzle( 神奈川19区 )

作文とロックンロールが好きです。
https://twitter.com/9en_T

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