再出発

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 車の揺れは大きくなっている。郊外を抜けて、田舎町へと近づいていた。建物は減って、だんだんと緑の割合が増えている。運転手の男と助手席に座る女は、車に乗ってから一言も発しない。聞こえるのはタイヤが地面を蹴る音とエンジン音だけ。気まずい雰囲気である。何を言っていいか分からず、私も黙り込むしかなかった。

 しばらくして車が止まる。

「着いたよ」

 男はそう言って、ドアを開けた。色とりどりの花を散らした草原が広がっており、奥には二本の立派な樹が並んでいた。間から木造の一軒家が淡い水色をのぞかせている。美しい景色に励まされ、声をかけた。

「いい所じゃないか。あの洒落たのは君が住んでいる家か?」

 男は一瞬驚いたように私の目を見た。しかし、すぐに笑みを浮かべると、言葉を返した。

「ああ、これから僕たちと一緒に住むのさ、父さん。あなたが昔作った素晴らしい家にね」

 どこか哀しい表情だった。
その他
公開:18/07/18 23:34
更新:18/07/19 14:23
北オーストリアの農家

土性武蔵

小説を書いております。

ショートショートというと、やはり星新一さんが大好きです。原点です。

気難しいところはございますが、気軽に声をかけてください。

@doshow_634

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