夏の友達

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夏休みになると彼は毎日のように遊びに来た。
小石で窓を叩くことを合図にして、ベランダに繋がっている窓から出入りする。

「玄関から来ればいいのに」
「こっちの方が楽しいだろ?」

両親がいないときを狙って訪れ、夕方の母が帰ってくる頃には出ていく。

「でも、さすがに石をぶつけるのはやめてよ。ガラス割れたら困るじゃん」
「大丈夫だって、俺そういうの得意だから」

得意げにポケットから小石を取り出す彼にあきれながら、テーブルに麦茶とお菓子を置く。長い付き合いになるが、彼がそれらに手をつけたことは一度も無い。

「また、出しっぱなし」
「あ、ごめんね! 片付けるの忘れてた」

残されたコップとお菓子を不思議そうに持ち上げて母は台所へと戻っていく。

この辺りにはもう子供は居ないはずなのにとつぶやく母に私は首を傾げるしかなかった。
ホラー
公開:18/07/16 08:14

ふみ はじめ

最近とても困っていることはハンバーガーを上手に食べることができない事です。

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