奥の湯

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曲がりくねった真っ暗な路地の向こうに灯りが見えた。
木造の建物──。
入口には「ゆ」と太筆で書かれた暖簾がかかっている。
ガラリと引き戸を開け中へ入る。
「イラッシャイ」
番台に年寄りの婆さんが坐っている。
ひとり四十五銭とある。
あまりの安さに驚いていると、だから銭湯というのじゃありませんかと云われた。

奥へ進むと広い湯船が広がっていた。
向こう岸も天井も霞んでよく見えない。
ずっと向こうには大きな柱の影がぼんやりとある。
生暖かい湯船に入ると、なだらかな傾斜が続く。
やがて胸元までお湯がきたので、平泳ぎで進んでいく。
どこまで泳いでも対岸は見えそうにない。
辺りを見ると大勢の裸の男女が同じように黙々と泳いでいた。
力尽き、ぼくの眼の前で湯の底へと沈んで行く者もいた。

ぬるっと、何かが身体に触る。
蒼い魚。
鮮やかな色をした熱帯魚の群れにつられ、ぼくは泳ぐ速度を速めていった──。
ファンタジー
公開:18/07/15 23:27
更新:18/09/17 16:34

渋谷獏( 東京にいるけっどカンサイジ〜ン♪ )

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