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私が生まれたとき、既に玄関には一枚の写真が飾られていた。額縁に入ったくすんだ色の絵画は、祖父が昔描いたものだと祖母から聞かされた。
祖父はかつて天才画家と言われたが、世間に持て囃されるきっかけとなった絵画は海外作品の盗作だったそうだ。騙されたと激怒した世間は、家に石やガラス瓶を投げた。庭には様々な色が散らばった。しかし彼は画家ではなかった。趣味で絵を描いていた。窓の外の景色を「美しい」と言いながら、穏やかに笑った。
そして、憧れた画家の名を、この国では埋もれていた作品を世に知らしめた。自分の名は残らずとも良いのだと筆を折り、作品をすべて燃やした。
私が大人になるにつれ、インターネットが普及した。今なら絵画の名前も、作者も簡単に調べることができる。
けれどそれは、ある人物がその地味な絵画を愛していたからだ。
罪人として忘れられた祖父の目が本物だったことを、今ではもう、私だけが知っている。
祖父はかつて天才画家と言われたが、世間に持て囃されるきっかけとなった絵画は海外作品の盗作だったそうだ。騙されたと激怒した世間は、家に石やガラス瓶を投げた。庭には様々な色が散らばった。しかし彼は画家ではなかった。趣味で絵を描いていた。窓の外の景色を「美しい」と言いながら、穏やかに笑った。
そして、憧れた画家の名を、この国では埋もれていた作品を世に知らしめた。自分の名は残らずとも良いのだと筆を折り、作品をすべて燃やした。
私が大人になるにつれ、インターネットが普及した。今なら絵画の名前も、作者も簡単に調べることができる。
けれどそれは、ある人物がその地味な絵画を愛していたからだ。
罪人として忘れられた祖父の目が本物だったことを、今ではもう、私だけが知っている。
その他
公開:18/07/15 21:22
更新:18/07/15 23:16
更新:18/07/15 23:16
生まれ変わったらジンベエザメになりたい。
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