隠れ家カフェの目論見

そのカフェは日当たりも風通しも良く、シチリアレモンの香りもする素晴らしい場所にあった。おまけに窓際からは海沿いの青い街並みが見え、さながら一枚の絵画のようだ。
観光客にうけること間違いなしのこのカフェのたった一つ誤算は、自然豊かすぎて誰にも気づかれないこと。
「店長。もう焼き払いましょう。それしかないです」
「馬鹿言うな！この景観を取ったら何が残るんだ」
料理と言ってくれよと思いつつ、シェフが提案した。
「じゃあ童話の力を借りましょう」
そしてシェフは街から続く道に花の種を撒き始めた。
『種を一つ持ってきたらコーヒーサービス』の看板とともに。観光客は花々に導かれ、種を持ってやってくる。そしてコーヒーとともに花を一輪プレゼントするのだ。
「トリュフを見つけて頂いたら調理しますよ」
客は楽しんで持ってくるし、食材費も浮くしでいいことづくめ。その店は花に愛されている。貴方もどうぞいらして下さい。