プロヴァンスの青い家

鬱蒼と茂る森の奥に、一軒の青い家がありました。皆そのことには気づいていましたが、いったい誰が住んでいるのかまでは知らずにいました。なにせ家は古びた様子はなく、ガラスはいつもピカピカで、宝石のように輝く花々がいつも咲き乱れています。
そのことに気づいた若者が様子を見に行きました。若者は戻らず、一輪のアヤメが咲きました。
疲れた旅人が癒しを求めて扉を叩きました。その日、レモンの花が咲きました。
子どもたちが肝試しに並んで入って行きました。その日はヒガンバナが咲き乱れました。
老人は皆口を閉ざします。そんな家はないといいます。だから青い家はどこにもないのです。探せばあります。その家は、年がら年中花が咲き、枯れることなく果実が実り、どこまでいっても晴れています。探せばあります。本当に、誰も知らない家が待っています。あなたのことを。