森の奥の湖

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猛暑日で汗が噴き出る。ふと見ると、銭湯があった。

「タオルセットをください」番台で声をかける。
「はい、好きなのを選んで」カラフルなタオルの中から、鮮やかな黄色のタオルを選ぶ。脱衣所でぐしょ濡れの服を脱ぎ、タオルを持って浴場の扉を開ける。

ガラッ

そこは森の中だった。
正面にはブルーグレイの質素な家。その手前に2本の木がある。色とりどりの花が地面を覆っている。そんな壁画だ。
見ると、花は湯舟にも浮いている。と思ったら、それは先客の頭に乗ったタオルだった。
色鮮やかな風景に見とれながら掛湯をし、湯舟に入る。

ドボン

うわっ、冷たっ。

水風呂だ。
その、まるで森の奥で見つけた湖に浸かっているかのような雰囲気に、ついつい長湯ならぬ長水してしまう。すっかり体の芯まで冷えた。

銭湯の外はまた灼熱の世界だった。しかし今はその暑さが気にならない。森の、湖の、涼しさが、僕を優しく包んでいる。
その他
公開:18/07/16 19:46
更新:18/07/17 15:08

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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