天地の灘

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天地が裂けるような衝撃と共に、海面へ太く厳めしい雷が落ちた。
大荒れの海原は海中の様々なものをかき混ぜて、怪しい空の色も相まった気味の悪い青漆色に染まっている。
見渡す限り何も存在しない荒海の真ん中で青い船はぐにゃりと揺さぶられ、その船体を弄ばれ続ける。持ちこたえていたのも束の間、船を飲み込むほどの高波が、その横面めがけてゴゴゴと迫り来た。
ついに飲まれる――傾いていく船体にしがみつく船人が悟ったとき、大きな雷と共に何かが頭上に舞い落ちた。
目を凝らす船人の目が捉えたそれは、無数の小さな花だった。
幾本もの雷が海を突き刺すなか、黄や薄赤の小さな花が、ふわりふわりと降り注ぐ。
その幻想的な光景に、船人はしがみつくのも忘れ見入った。
瞬間、船もろとも天地がくるりと逆転した。




意識を取り戻した船人は、妙な違和感に辺りをぐると見渡した。
見慣れないその場所は、閑かな森の、青い家の中だった。
ファンタジー
公開:18/07/16 18:33
更新:18/07/21 07:40
絵画を180度回転させてお楽しみください

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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