石の神さま

小学生の頃、校庭の隅に石を積み上げて神さまを作った。

最初は、脱走したうさぎが帰ってきた。
次に、なくしたと思っていた鉛筆が帰ってきた。その次に、100点が取れますようにとお願いをした。全て叶ったから私は嬉しかった。だから願いが叶うたびにひとつ、またひとつ石を積み上げた。

たまに叶わないお願いもあるけど、気にしなかった。だって、お願いをしないと、もっと悪い結果だったかもしれないから。

そして、ついに私は6年生になってしまった。中学校へ神さまは連れていけない。

卒業式の日、神さまにお別れを言うために探したが見つけられなかった。それ以降、私は石を積み上げることをしなくなった。

「お母さん、みて！｣
「んー？ どうしたの？｣
「神さま！ 神さまがね、ただいまって！｣

来年の春から小学校に通う娘はベランダに石の山を作るようになった。私はそれをどうしても崩せずにいる。