鉄錆の塔

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冬のにおいがする。
鼻に少しつんとくる冷たいそれを身体に馴染ませるように吸って、僕は地元に帰ってきたことを知る。

雪の中で冷やして忘れたみかんを食べて育った猫はいまどこにいるだろうか。

夏の公園でカラスを食べていた蟻たちはまだあそこにいるのだろうか。

兄の運転で久しぶりにの故郷の道をたどる。回転寿司が潰れてコンビニになっていたり、工事途中だった知らない宗教の集会所は見事に完成していたりした。

何よりもこの町の空は広い。

「ねぇ、兄貴あれなに」
「神さまの足だよ」
「神さまの足?」

鉄錆色の塔がいくつか視界に入る。

「あそこには神さまがいるんだ」
「神さまってどこの?」
「僕たちの神さまだよ、覚えてない?」
「覚えてないな」
「大丈夫、思い出せるよ」

鉄錆色の塔は町のあちこちに立っている。けれど、なぜだろう僕の家の近くのものが一番古いような気がする。
ファンタジー
公開:18/07/14 22:18

ふみ はじめ

最近とても困っていることはハンバーガーを上手に食べることができない事です。

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