わたしの家

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 わたしの家は森のそばにあった。
 のどかな景色、そして、誰にも見られずに訪問できる家。
 お客さんが来ると、わたしは家を出され、森の中で遊ぶ。
 夕方になって戻ってくると、わたしは気づかれないように木の陰に隠れる。そして、そっと見る。
 家の前ではお客さんが母に別れのキスをしている。
 金色の光の中で母はうっとりと目を閉じている。
 輝くように美しいわたしの母。

「何を考えているの?」
 男に尋ねられ、わたしは微笑んだ。
「昔のこと。母のことを思い出したの」
「ふうん」
 興味がなさそうに男はわたしを抱きしめる。
 降ってくるキス。
 その甘さにわたしは身をゆだねる。
 母はわたしが見ていることに気づいていたはずだ。
 今、わたしが気づいているように。
 木の陰からこちらを見つめている娘の目。
 わたしも夕焼けの光の中で輝いているだろうか。
 わたしの家は今も森のそばにある。
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公開:18/07/14 11:33
更新:18/07/29 16:04

田辺 ふみ

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