無知

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 その農夫は毎日、朝から晩まで畑を耕していた。子どもの頃に両親を亡くし、以来、たった一人で。自分の食べる分だけを作り、暗くなると寝て、明るくなると起きる。そんな毎日。農夫の住む場所は街道からもかなり離れているため、旅人が訪れるようなこともない。六十歳過ぎのこの歳まで、両親以外の人と接触したことはなく、話し相手と言えば、森の小鳥かリスぐらいのもの。
 そんな彼を神があわれに思われたのか、ある日、農夫が畑を耕していると、土の中から金ぴかの金塊が見つかった。それを見て、農夫はため息をつき、
「こんな大きな石があっては、畑を耕せないじゃないか」
 そう言って、えっちらおっちら金塊を運び、漬け物樽の蓋の重しにした。そして、再び農作業に戻り、暗くなるまで作業を続け、満天の星を見ながら、安らかに眠りについた。
その他
公開:18/07/14 08:37
更新:18/07/14 09:14

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