素敵な夢

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「先生、適正反応を確認しました」
「よし、今回はなんの絵画だ」
「これはクリムトの……」「まぁいい。とっとと患者の様子を見るとしよう」
お前が聞いたことだろうと助手は口には出さなかった。
画面に花や木々に囲まれた素敵な家とそこに近づく一人の女性が映された。
今回こそは……
そんな二人の願いも空しく、女性は家の壁にペンキでもってひどい言葉を書き殴った。殺虫剤を辺り一面に振りまいて楽しい虫たちは沈黙した。美しい花や木々に油をまき散らし、そこにマッチで火をつけた。どこからともなく現れた重機に乗って家を破壊した。
最後の画面には焼けた土地が映るのみだった。

感じの良い貴婦人がヘッドセットを外す。「本当にすっきりした気分。でも、なにをしたのかは覚えていないのよねぇ」
夢の記憶は消していた。
「ストレス値は減少しています。素敵な夢をみた、それでいいでしょう」
こうやっていつも誤魔化しているのだ。
SF
公開:18/07/15 13:19
更新:18/07/16 17:14

sakana

ショートショート好きです
学生やってます。

Twitter @n_ak_as

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