緑に溶けた朝

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木漏れ日がきらきら零れ落ちる優しい朝。
少女は誰かの声を聞いた。
「誰なの?」
遠くの森で、鳥がさえずる声がした。

できたてのバターをパンに塗っているとき。
少女はまた誰かの声を聞いた。
「どこにいるの?」
風が吹いて、木々がさわさわと鳴いた。

少女が乾草を牛舎に運んでいるとき。
すぐ後ろで誰かの声がした。
「わたしに用があるの?」
振り向くと、牛がのんびりと尻尾で虫を追っていた。

少女が湖の水を汲んで小径を歩いているとき。
すぐ近くで声がした。
『ここだよ』
桶の水が跳ねる音に消え入りそうな、小さな声。

愛しい我が家に戻ると、声は少女の耳にはっきり聞こえた。
『ここだよ』
「ここにいたのね」
少女がお腹をそっと撫でると、じんわりと温かさが伝わった。

木漏れ日がきらきら零れ落ちる優しい朝。
少女はその身体が自然の一部となり、緑に溶けだすのを感じた。
ファンタジー
公開:18/07/15 08:52

UBEBE

おっさんになりましたが、夢は追い続けます

「小説は短く、人生は永く」

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