ファム・ファタルの眠り

5
70

「本当に幸せだったわ...。私の身体は大好きなこの土地に葬って...」
最愛の妻はそう言うと永遠の眠りについた。
ワアアッ!
慟哭する僕に、「貴族の娘に畑仕事は無理だ。俺の言った通りだ」と親父は吐き捨てた。
農民の僕と貴族の彼女が結婚するなど普通あり得ない話だ。だが、僕らは出会ってしまった。
そして、僕らは運命と信じた。周りの反対を押し切り、彼女は農家の嫁になってくれた。そして、本当に良く働いた。それが祟って...。
本当は、僕は彼女の疫病神だったのかもしれない...。
僕は彼女を庭に葬った。

「ここには、ファム・ファタル(運命の女)がいる」と言って、ある日、ある画家が僕の家を描いた。貧しく綺麗とは言えない僕の家を描きたいなんて、なんて物好きな画家なんだろう...。
だが、画家が描いたのは、あばら家とは思えない美しい色彩の点描...。運命の人が透ける。
(幸せだったわ)
嘘じゃなかった。
ファンタジー
公開:18/07/14 00:01

十六夜博士

ショートショートを中心に、色々投稿しています。
よろしくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容