44. その森の一軒家

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古い森の一軒家に農夫とその妻は住んでいた。

農夫の趣味は絵を描くこと。
農業の仕事の合間に妻をモデルにして様々な絵を描いていた。
だがその絵にはいつも顔がなかった。
いや輪郭はあるのだがのっぺりとしていて表情はないのだ。

ある時妻は何故自分の顔を描いてくれないのか夫に問うた。

夫は少しの笑みを浮かべ、まだ熟れきっていないリンゴをかじりながら
「愛しすぎているから描けないんだ」
そう言った。

翌日の早朝、夫はキングサリによって昏睡している妻を抱え自宅の裏庭に埋めた。

次の妻もその次の妻も同じ事を聞いてくるので、また同じように庭で眠ってもらった。

「余計なことを聞かなければこんなことには…」

数年後夫が亡くなったときは一人だった。見つけたのは親戚の者だった。
遺言によりその家の庭に埋められ、その時初めて妻たちがここに眠らされている事実が判明した。

今でも皆でここに棲んでいるー。
ホラー
公開:18/07/13 23:38
更新:18/10/07 14:26
北オーストリアの農家 キングサリ クリムト

ことのは もも。( 日本 関東 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていきたいと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

 

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