私は知っている

私は知っている
あの国のあの場所に一軒の古い小屋が建っている事を
私は知っている
その古ぼけた小屋は白樺が群生する森の奥に建っている事を
私は知っている
その小屋には現在、一人の女性が住んでいる事を
私は知っている
その女性は周りからエミールと呼ばれている事を
私は知っている
エミールは以前、ダンテと言う名の年の離れた男性とこの場所で一緒に暮らしていた事を
私は知っている
ダンテは、毎日の様に酒を飲み、その度にエミールに暴力を振るっていた事を
私は知っている
エミールはこっそりダンテの飲む酒に毒を少量ずつ混ぜていた事を
私は知っている
現在、ダンテの遺体はその小屋の床下に埋まっている事を
私は知っている
その床下にはダンテ以外にも他に三人の男性が埋まっている事を
私は知っている
彼らの死後、エミールは多額のお金を手にしている事を
私は知っている
私の肉体が、遥か昔に滅んでしまった事を