幻想動物見聞録・楓子の場合

どうにでもなれと思ってたんです、私。裸足でベランダの縁に立ってみました。私かなりバランス感覚いいんです。推薦で体操部にも入れたんですよ。補欠だけど。選ばれる人って理由があるんでしょうね。どうやら私にはそれがないようです。
風の気持ちいいさわやかな日で、オゾンの結晶でも含まれているみたいでした。私の家は見晴らしが良くてね、眼下には遊歩道がみえる。私がベランダで演技をしますと、足が滑りました。ガツンと股を打って、痛いと思う間も無く真っ逆様。まあいいか、そんなつもりでいたんですけど、私の体は何かに引っかかって落ちない。不思議がっていたら、目が合いました。それは水晶みたいな透明な龍。随分迷惑そうに私を見てましたが、事情を察して降ろしてくれました。お昼寝を邪魔してしまったようで、悪いことをしました。あれ以来、彼は私の邪魔をします。今もそこに居ますよ。プリズムが綺麗でね。ナナコって私は呼んでます。