その指が届かない

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「ペン落としたよ、はい」
隣の席の島田さんが、僕の落としたペンを拾って、こっちに渡してくれようとした。僕はこの幸せな時間を少しでも楽しもうとするため、意地悪を考えた。
「あー、届かない。ごめん。島田さん、届かないよ」
僕はペンの先端から数センチメートルの所で指をプルプルとさせた。さあ、島田さん、どうする。
「もう、何をやっているの。机をこうして……ほら」
島田さんは、自分の机を僕の机とくっ付けた。そして、再びこちらにペンを渡そうとする。
さっきよりも島田さんとの距離が近くなる。ほのかに甘い香りがする。島田さんの香り。女の子は、何でこんなに良い香りがするのだろうか。謎だ。
僕はペンを受け取ろうとし、手を滑らせたフリをして、島田さんの指をつまんだ。
「あ、ごめん」
嘘。わざとだ。島田さんの指は、柔らかい。クラスの男子が誰も知らない情報を僕は得た。
「もう、知らない」
島田さんは、ペンを投げた。
青春
公開:18/07/13 01:01

undoodnu( カントー地方 )

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