貞子

あたしの家に、貞子が出るようになった。
あの映画でおなじみの髪の長い女のお化けだ。
夜の零時になると、家のTV画面から貞子がはい出して来る。そして奇声を上げあたしを散々脅かしたあと、のそのそと画面の中へ帰って行くのだった。

｢なんだよ、そんならTV捨てればいいじゃん」
彼氏のN男に相談した。
｢でも、これ高かったしさァ。第一あたしTVっ子だから、捨てるのなんて無理、無理！」
N男は目をつむって考え、
｢ちょっと待ってて」
と、言うと部屋を出て行ってしまった。
しばらくするとN男は自分の家のTVをかついでやって来て、二台のTV画面を向かい合わせにした。
｢これでよし！」
そして夜の零時がやってきた。貞子はいつも通りあたしのTV画面から出てきたが⋯⋯そのままN男の持って来たTV画面の中へと消えて行った。

それ以来、貞子は出なくなったのだが、N男はずっとあたしの家に居着くようになった──。