私と彼とベビードール

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電車の中で、ベビードールの話を聞いた。隣にいた女子大学生が話していたのだ。彼女はそれを買って、彼氏とのマンネリを乗り越えたらしい。
私の家庭にも、そういった刺激が必要だと思った。結婚生活に不満はないつもりだが、どうも夫はそうではないようだ。私が極端に料理下手なせいか、彼はいつも怯えているように見える。
帰りがてら、ベビードールを買った。きちんとかわいいものを選び、鏡で確認する。
きっと大丈夫。
彼が喜んでくれることを願っていた。

私は家畜の餌にもならないほど不味い料理しか作れない。だから夕食はいつも出前だ。
彼は無言で食事を摂り、疲れた表情で布団を捲る。そして、用意したベビードールを見て固まった。
「かわいいでしょう?」
伸ばした手は、強い力で振り払われる。
「もう無理だ、耐えられない。離婚してくれ」
困惑する私と憔悴しきった彼の隣で、等身大のベビードールは穏やかな微笑みを浮かべていた。
その他
公開:18/07/12 00:05
更新:18/07/31 01:22
夫婦関係

ハナヅキアキ

生まれ変わったらジンベエザメになりたい。
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使用写真はすべて自分で撮影しています。

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