瓶詰めの恋人

恋人を瓶の中で育てている。
今はまだ私の親指のサイズしかない小人だけれど、これから3日で大きくなるのだ。理想は私よりも頭が良くて、無駄なお喋りをしない人。
瓶の中で、彼は私の与えた食事を頬張っている。生命は懸命に生きようとしている。
誤解して欲しくないのは、これはれっきとした販売物だということ。人間が恋愛をしない事実に頭を抱えた政府は、生産性を高めるため人工的に人間を作ることにした。理想の相手ならば恋愛をする、という策略は正解で、今では街を歩く誰もが「瓶詰めの恋人」を連れている。
成長にかかる時間は3日。きちんと食事を与え、話しかけ、瓶から人間が出てくるのを待つだけだ。難しいことは何もない。
それから3日で、彼は大きくなった。でも私は彼を好きになれない。頭もいいしお喋りでもないが、顔がまったく好みではないのだ。
仕方がない。彼は殺処分に回し、また新しい「瓶詰めの恋人」を買うことを決めた。