居なくなった親友

7
56

夫はまた、十年前に突然目の前から居なくなった親友のことを嘆いていた。

「あなた。お茶が入りましたよ」
「ああ、ありがとう」
若い男が二人で写った写真を、寂しそうに眺めている。
「そんなに、その方が気になるのですか?」
「ああ、すまんすまん」
夫は顔を上げやさしい笑みを浮かべた。
「──あなたまさか、そのN男さんのことが好きだったんじゃ?」
あたしは思い切って訊いた。
「アハハ、馬鹿なことを。N男とは子どもの頃からの親友でな、兄弟のようにずっと一緒に育った仲なんだ。それだけさ」
「まあ」
「それが突然なんの書き置きもなく失踪してしまったんだ」
「心配?」
「そりゃ心配もするさ。今頃どこでどうしているのやら」
また寂しそうに写真を眺める夫を残し、あたしは茶の間を去った。

そんな夫の姿を見るたびに、あたしは胸が張り裂けそうになる。
ああ、今すぐにでも告白したい。N男はここにいるよって──。
恋愛
公開:18/07/10 17:50
更新:18/09/17 16:28

渋谷獏( 東京:関西人 )

(獏・ω・) 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。
土器っ土器っ〜♪ 獏ぅ獏ぅ〜♪
https://twitter.com/ShaTapirus
https://www.instagram.com/tapirus_sha/
http://tapirus-sha.com/

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容