空気旦那
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その男は不細工でも美男子でもなく、話がうまいわけでも下手なわけでもなく、仕事も可もなく不可もなく、空気のように存在感がなかったものだから、それが居心地が良くて私たちは結婚をした。
やがて子供が生まれ、子供たちに生命力を吸い取られるように、彼はますます影が薄くなり、その姿は光に溶け、闇に紛れ、声はテレビや子供の声にかき消され、しまいにはどこにいるのか認識するのも難しくなった。
それでも彼はこの家から仕事に行き、帰ってきているようで、脱いだ服や靴があるし、ご飯を食べた形跡もある。
そんなふうに日々を過ごし、ある日息子に「もうしばらく父さんを見てないような気がするよねえ」と言ったら、「何言ってるんだよ。もう随分前に死んだだろ」と言われ、あれと驚き部屋を見渡すと、生きてる頃と変わりない影の薄い幽霊となって、出勤の準備をしていた。
やがて子供が生まれ、子供たちに生命力を吸い取られるように、彼はますます影が薄くなり、その姿は光に溶け、闇に紛れ、声はテレビや子供の声にかき消され、しまいにはどこにいるのか認識するのも難しくなった。
それでも彼はこの家から仕事に行き、帰ってきているようで、脱いだ服や靴があるし、ご飯を食べた形跡もある。
そんなふうに日々を過ごし、ある日息子に「もうしばらく父さんを見てないような気がするよねえ」と言ったら、「何言ってるんだよ。もう随分前に死んだだろ」と言われ、あれと驚き部屋を見渡すと、生きてる頃と変わりない影の薄い幽霊となって、出勤の準備をしていた。
その他
公開:18/07/10 13:08
人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。
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