クマのぬいぐるみ

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自分にしか見えないクマのぬいぐるみが、幼い時からずっといる。それは怖いわけではなく、どこか相棒のような友達のようなそんな感覚だった。幼い私の遊び相手、小学生になると忙しい両親に代わり私の話し相手になってくれた。青春時代には恋愛相談もした。頭がおかしいと思うかもしれないが、誰にも見えないそのクマは確かに存在していて幼心に大人に話してはいけないと思っていた。今の今まで誰にも話した事がなかった。私も大人になり素敵な人に巡り会い、明日結婚する。クマは嬉しそうに私の門出を祝ってくれていた。その時何故か結婚したらクマはもう一緒にいてくれないんじゃないか?そう思って寂しくて寂しくて泣いた。クマは困ったように私の頭を撫でそして消えた。クマは亡くなった姉が大事にしていた宝物だった。大好きな姉が亡くなった事を理解できなかった幼い私が作り上げた幻想だったのか、姉が心配してくれていたのか…今ではもうわからない。
ファンタジー
公開:18/07/07 03:02

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