七夕の夜に

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駅やスーパーで、笹の葉と短冊が用意された七夕コーナーを目にする度、
(もう無邪気に願い事を書いて短冊を下げる歳じゃないな)
と思う。
「七夕か」
街に住んでいると、本当の暗闇がない。暗闇がないから、本当の星空も見えない。

その年の七夕、私は十数年ぶりに山に登り、山の天辺に寝転び、宇宙を見た。空にはちゃんと星が溢れていた。流れ星が降るように落ちてきて、いくらでも願いごとを出来たのだけれど、どれも他愛のない、くだらない願いごとのような気がして、ただ流れる星を眺めた。
ふと横を見ると、亡くなった父が座ってやはり星空を眺めていた。声を出したら消えてしまいそうで、黙って二人で並び星を見ていた。
笹の葉も短冊もない。願う言葉もない。私は星に、ただ祈ろう。大切な人を思って祈りたい。
その他
公開:18/07/07 00:05
七夕の夜 亡くなった父の初盆に寄せて

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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