うさぎのこども
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娘を産んだら、兎だった。
大きさは掌の半分位。全身毛のないピンク肌、両耳が後頭部の上に付いていた。鼻をふごふご動かす仕草は愛らしかったが、若い看護師は悲鳴を上げた。助産師は、流石落ち着いていて、てきぱきと娘を保育器に寝かせてくれた。
「ご主人を呼びますか?」
静かな声で尋ねられ、私は頷いた。隠すわけにもいかない。
仕事帰りに駆けつけた夫は、分娩室外のベンチから呼ばれた。一声も発さず保育器を見つめる無表情な横顔を見て、母娘ふたりで生きていくのかなと心が冷えていった。
しかし帰り際、夫は助産師に「退院日はいつですか」と尋ねたのだ。
「迎えにくるの」声が裏返った。
「来るよ。なんで」夫も面食らった様子だった。
だって気味悪くないの、と看護師の悲鳴が耳に甦り、涙目になった私を夫は抱きしめた。
「ごめん、君の血が勝つと思ったんだ」
夫の顔を見ると、鼻をふごふごと動かす仕草が、とても愛らしいのだった。
大きさは掌の半分位。全身毛のないピンク肌、両耳が後頭部の上に付いていた。鼻をふごふご動かす仕草は愛らしかったが、若い看護師は悲鳴を上げた。助産師は、流石落ち着いていて、てきぱきと娘を保育器に寝かせてくれた。
「ご主人を呼びますか?」
静かな声で尋ねられ、私は頷いた。隠すわけにもいかない。
仕事帰りに駆けつけた夫は、分娩室外のベンチから呼ばれた。一声も発さず保育器を見つめる無表情な横顔を見て、母娘ふたりで生きていくのかなと心が冷えていった。
しかし帰り際、夫は助産師に「退院日はいつですか」と尋ねたのだ。
「迎えにくるの」声が裏返った。
「来るよ。なんで」夫も面食らった様子だった。
だって気味悪くないの、と看護師の悲鳴が耳に甦り、涙目になった私を夫は抱きしめた。
「ごめん、君の血が勝つと思ったんだ」
夫の顔を見ると、鼻をふごふごと動かす仕草が、とても愛らしいのだった。
ファンタジー
公開:18/07/08 17:03
更新:18/07/09 20:38
更新:18/07/09 20:38
読んでくださる方の心の隅に
すこしでも灯れたら幸せです。
よろしくお願いいたします(*´ー`*)
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