ずーっといっしょ

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「私は死神です」
その美しい少年は言った。シトシトと雨が降る中、赤い傘をさして、夜の街の風景と一体になったかのような少年だった。年は14、5くらいだろうか。とても整った顔立ちの少年だった。
「余命、1時間です」
少年は静かに言った。その声は雨の音にかき消されそうなほど小さく、しかしはっきりと耳に残った。
最初に思い浮かんだのは娘の紬のことだった。まだ5歳の一人娘。目の中に入れても、とは彼女のことを言うのだろう。1時間、今から彼女の元に走っても間に合うまい。
「娘に届けてくれますか」
死神は静かに頷いた。

父親の亡くなったある少女に届いたのは短い話だった。幼い少女はまだ死の意味があまり分からず、ただ最愛の人がいないという事実を悲しんでいた。そこへ美しい少年がふらりと現れた。ひらがなで書かれた優しいお話。彼女のことを愛し続けた男の、彼女に精一杯の愛を届けるために書かれた話だった。お話の名は。
その他
公開:18/07/08 11:10

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