彷徨うイノチ

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母なる大地が大きく揺れ、多くのイノチを奪う。
青空は消え、いつもは僕らを潤す小さな雨粒までが群れとなってイノチを押し流した。
ー何でだよ...
イノチのツブのか弱さに震えていたら、イノチがイノチを奪ってた...
ーきっと僕のイノチも簡単に奪われるし、僕もイノチを奪うかも...
怖くて、無力で気が遠くなる...

僕のイノチが彷徨い始める。
ヒュルヒュル...
微かな旋律。イノチが高らかに歌う音の粒子だ。
閉じていた目を開くと、無限の色彩で絵を描くイノチ。
ヒュルヒュル...
共にボールを追いかけるイノチたちが流す、星屑のように煌めく汗粒。
大地の恵みを前に、イノチたちの笑顔、笑顔...。小さなイノチの笑顔は、新しい太陽の粒となるだろう。
言の葉の粒を読みふけるイノチはどんな世界、未来を見つめているのか...
ヒュルヒュル...
僕のイノチが戻ってきた。

うん、イノチの粒はまだやれる。
ファンタジー
公開:18/07/08 07:42
更新:18/07/14 22:26

十六夜博士

ショートショートを中心に、色々投稿しています。
よろしくお願いします。

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