少女人形

娘が帰宅してくると、小脇に人形を抱えていた。縫製された手作りと思われる少女の人形だった。首だけが木彫りの球体で顔が描かれてあり、黒糸で頭髪がつけられている。
「それ、どうしたの？」
「お姉ちゃんにもらった」
私に奪われるのを拒むように抱きしめる娘に、捨てなさいとも言えず、少し様子を伺うことにした。

朝。食事の時も人形を抱き「おはよう」と何度も声をかけ頭を撫でる。

娘を幼稚園に送り出し、帰宅した。
人形は娘の部屋にいる。あの不気味な人形を娘から手放す方法はないものか。その時、

「お母さん」

居間の扉から娘の声が聞こえた。娘はバスに乗り出発したはずだ。恐る恐るドアを開ると、誰もいない……
視線を下にやると、あの人形が立っていた！
腰の力が抜け、床を這うように人形から遠ざかると、浮遊し近づいてきた！

「お、は、よ、う」

そう口を開いたのは、ドアの向こうに立っている、見知らぬ女だった。