ゼラチン状のすずり

4
76

小学生。それはみんなが持っていない奇抜なものを持っていると、誰もがヒーローになれる。
そして、僕にもついに、ヒーローになれるチャンスが来たのだ。
昨日、外国から出張で帰ってきたお父さんがお土産としてくれたもの、それはゼラチン状のすずりだ。
都合良く、明日は書道の授業がある。
わくわくした気持ちを抑えきれぬまま、次の日を迎えた。
ついにやってきた。書道の時間だ。
すずりを机に置く。一滴の水を垂らす。墨を持つ。スタンバイ完了だ。
異形のすずりに、みんなの視線は釘付けだ。
ああ、最高の気分。これがヒーローか……。
墨をすずりに付け、動かす。
すずりが墨を弾き、磨ることができない。
ぐにゅぐにゅぐにゅ。
「ぷっ」
教室のどこからともなく笑い声が漏れ、そのまま声は大きくなっていった。ヒーロー失墜だ。
く、くやしい……。
「私の墨汁使う?」
隣の席の鈴木さんが声を掛けてくれた。
お父さん、ありがとう。
青春
公開:18/07/06 01:58
ランダムキーワード

undoodnu( カントー地方 )

構成の凝った作品が好きです。
雑絡みOK!

電子書籍発売中:
https://www.amazon.co.jp/undoodnu/e/B07MK93FWK

Twitter:
https://twitter.com/undoodnu

note:
https://note.com/undoodnu

タップノベル:
https://tapnovel.com/writers/15521

アルファポリス(漫画など):
https://t.co/dsJrZRgEKC

ベリーショートショートマガジン「ベリショーズ」参加&編集&IT技術顧問:
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07PDJ6QPL

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容