野良硬貨

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「あ、野良硬貨めっけ」
「野良硬貨?」
「そう、道とかに落ちてる硬貨。持ち主がいないから野良でしょ?」「私が今日からあなたのご主人様よ」
そう言いながら硬貨を拾う。財布に入れようとしたそのとき、硬貨がピッと跳ね、下に落ちた。そのままコロコロ転がって草むらの中に入ってしまった。
「あっはっは、お前がご主人様じゃ嫌だってさ」
「なによ失礼しちゃう、ふん」

翌日、同じ場所であの野良硬貨を見つけた。
「おい、またあの野良がいるぞ」
「あ、本当だ。よし」言うが早いか、硬貨を拾いあげると即座に自動販売機に投入する。
チャリン、ガタン、ゴトン、ドンドン!自販機の中で野良硬貨が暴れている。
「おいおい、可哀そうなことするなよ」返金ボタンを押す。
チャリン、返金口に野良硬貨が戻ってきた、と思った瞬間、ピッと飛び出し自販機の下に転げて行った。

その日以来、僕たちの気配を感じると、野良硬貨は逃げるのだった。
その他
公開:18/07/03 21:43

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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