「ギッタンバッタン」

ギッたんというお爺さんと、バッたんというお婆さんがいた。
お彼岸の日になると、二人は向かい合わせに座る。ただ、二人の間には三メートルほどの距離がある。

「ギッたん」

バッたんがお爺さんを呼ぶとバッたんはわずかに上昇し、ギッたんはわずかに下降した。

「バッたん」

ギッたんがお婆さんを呼ぶとギッたんはわずかに上昇し、バッたんはわずかに下降した。

ギッたんバッたん、ギッたんバッたん。

二人の目線が水平に保つ事はない。
それでも二人は幸せそうに「ギッたん」「バッたん」と呼び合い、わずかな上昇と下降を楽しんでいた。


ギッタンバッタン、ギッタンバッタン。


その日、いつまでもシーソーの音が静かに響いていた。
誰もいない公園に。