肉じゃがみたいなムニエル

おふくろの味代表とされる肉じゃが。女子が習得したい手料理のNo.1でもある。

しかし、私の住む町ではちょっと違う。おふくろの味代表はムニエル。母親から初めて教わる料理もムニエル。さらに、学校の家庭科の授業もまずムニエルから始まる。ムニエルが作れずして人にあらず。と、言われているかどうかは別として、この町では何はなくともムニエルなのである。

昔々、この町にフランス人の夫婦が移住してきた。彼らはお近づきの印にと言って、フランス料理を教えてくれた。それがムニエル。フランス料理を食べたことのない町民たちはそのおいしさの虜となった。そしてことあるごとにムニエルを作るようになり、各家庭ごとに工夫を凝らすようになり、やがてはムニエルがおふくろの味となったのだ。

町の中心の広場には、そのフランス人夫婦の銅像が立っている。年に一度、各家庭のムニエルを持ち寄り、ムニエル祭りが開かれるのだった。