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バイクで走りに走って、見知らぬ田園に着いた。
あぜ道の傍らに※※珈琲焙煎所というのぼりが見えた。
店を覗くと、工場を思い起こさせる無骨な焙煎機器が並んでいた。
──いらっしゃい。
珈琲を注文し、店の前をウロついていたら草木に覆われた蒲鉾型のドームが見えた。それは凸型に穴が穿たれていた。
「あれ、何すか?」
──掩体壕。
「えんたいごう」
──飛行機専用の防空壕。戦争遺構だよ。
「ああ」
──出るよ。戦闘機の幽霊。
「え?」
──夜中にね、エンジン音が聞こえて
「へぇ」
飛行機だったらバイクよりも遠くへ行けるな……。
ブロォオオォン。
──驚いた?いいでしょ。焙煎気の音。
「……」
──ひひ。お待ちどう。
淹れたての珈琲の味は風を切るように爽やかで、沁みた。
──幽霊のエンジン音かと思った?
嗚呼。それはいい。
俺は飛行機の幽霊に乗って、どこまでもどこまでも飛んで逝きたいと思った。
あぜ道の傍らに※※珈琲焙煎所というのぼりが見えた。
店を覗くと、工場を思い起こさせる無骨な焙煎機器が並んでいた。
──いらっしゃい。
珈琲を注文し、店の前をウロついていたら草木に覆われた蒲鉾型のドームが見えた。それは凸型に穴が穿たれていた。
「あれ、何すか?」
──掩体壕。
「えんたいごう」
──飛行機専用の防空壕。戦争遺構だよ。
「ああ」
──出るよ。戦闘機の幽霊。
「え?」
──夜中にね、エンジン音が聞こえて
「へぇ」
飛行機だったらバイクよりも遠くへ行けるな……。
ブロォオオォン。
──驚いた?いいでしょ。焙煎気の音。
「……」
──ひひ。お待ちどう。
淹れたての珈琲の味は風を切るように爽やかで、沁みた。
──幽霊のエンジン音かと思った?
嗚呼。それはいい。
俺は飛行機の幽霊に乗って、どこまでもどこまでも飛んで逝きたいと思った。
ホラー
公開:18/07/04 02:04
【椿あやか】(旧PN:AYAKA)
◆Twitter:@ayaka_nyaa5
◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
◆お問合せなど御座いましたらTwitterのDM、メールまでお願い申し上げます。
◆【他サイト】
【note】400字以上の作品や日常報告など
https://note.com/nekometubaki
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