他人の空似

他人の空似、というんですか。僕はそれがよくあるらしくって。外を歩いていると、よお、と見知らぬ方が親しげに声をかけてきて。私がきょとん、としていると、あ、すいません、と慌てて去っていくようなことがある。まあ、世界に同じ顔が３人いるとも聞きますが平均的な顔なんでしょうな、それご日常茶飯事で。

そう言って笑う男は知らない。その偶然入ったカフェに自分と全く同じ顔の男がいて、たまたまお手洗いに立っているだけということ。そして二人が顔を合わせないよう二人の周囲はあたふたしていることを。

自分が世界初のクローン人間で同じ顔が世界に数百人いることを。

そして、世界中の人間は知らない。世界は一度滅び、世界は生き残った数名の人間の遺伝子から作ったクローンで埋め尽くされていることを。