ごじだつじの女

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我が社には、「ごじだつじの女」と呼ばれている社員がいる。
それまでは順調に仕事をこなしているのに、夕方5時になると途端に脱力してしまう。五時脱時である。
会社の終業時刻は5時30分。あと30分頑張ればよいのだが、それができない。取引先に出すメールも、翌日使う会議資料も、途端に誤字脱字だらけになる。

「五時脱時さえ無ければ、社内でも1、2を争う優秀な人なのにねぇ」
噂は社長の耳にまで届いた。そんな優秀な社員が五時脱時のせいで評価を下げるなんてもったいない。本人が気の毒だし、何より会社にとっても損失である。

そこで社長は会社の就業時間を30分繰り上げた。5時終業となるようにしたのである。

その結果

彼女は4時30分に脱力するようになった。五時脱時はなくなったが、終業前30分間の誤字脱字は相変わらずであった。
その他
公開:18/07/02 18:48

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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