裸王

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あの方はお優しい方なのだ、困っている国民がいれば自分を犠牲にしてでも救ってあげたい、そういう王なのだ。だから私たちは勿論、国民も彼を愛し、彼を許し、そして慕ってきたのだ。

王の前に現れたのは腕の確かな洋服作りの夫婦だ。慎ましく、正直に生きてきた、大事な国民の一人だ。しかし彼らの家は先の災害で消え、大事な布は一枚もなく、最早仕事をすることはできないと、国外の親族の元へ行こうと思うと王に挨拶にやってきたのだ。

王は生活がやっていけるのか、と尋ねた。わかりませぬ、と洋服作りの夫婦は涙を流した。すると王は怒り出したのだ、洋服作りの癖にその布をおいてどこにいくのか、行くならワシに服を作ってからにせよ、と。

王は裸ではない!愚か者には見えぬ服を着て闊歩される、頼む国民よ、彼は服を着ていると、頼む、いつもの喝采を頂けぬか。

国民は大臣の話に涙を流しながら、王様万歳といつも以上に喝采を浴びせた。
ファンタジー
公開:18/07/02 07:06

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