ちょぴん

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蒸し暑い夜だった。私は仕事帰りで、帰宅を急いで自転車を飛ばしていた。前方から20代ぐらいの若い男が、自転車に乗って「ちょぴん、ちょぴん、ちょぴん」と言いながら通り過ぎていった。
変な人だなと思いながら、家路を急ぐ。すると、ジョギングをしてる男性が「ちょぴん、ちょぴん」と言いながら、前を横切った。前を歩いている親子が「ちょぴん、ちょぴん」と一心不乱に叫んでいる。公園にいるカップルが、帰宅中のサラリーマンが、塾帰りの子供達が、犬の散歩中の女性が、皆口を揃えたように「ちょぴん、ちょぴん」と唱えている。
異様な事態にビクビクしながら自転車を走らせていると、ぴちょん、ぴちょんという水音と共に何か得たいの知れないものが、こちらに向かってくるのが分かった。
私は訳がわからず、ただただ恐ろしく、「ちょぴん、ちょぴん、ちょぴん」と喚きながら、無茶苦茶に自転車を走らせたのだった。
その他
公開:18/06/30 06:31

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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