逃走者

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「逃げろ!」
最近見回りが厳しくなっている。今までなら、静かに身を潜めていればやり過ごせたものを、俺たちの動向を、逐一報告する組織まで現れた。

そろそろ最後の検問だ。
「チョー、どうするの?」
「母さん、突破するぞ。大丈夫、普通にしていればいい。変に動揺すれば感づかれる。周囲とうまく同化するんだ」
奴らに捕まったが最後、外見どころか中身まですっかり変えられてしまう。俺はそんな仲間をたくさん目にしてきた。

検問には、赤い奴らがたくさん立っていた。心臓がバクバクする。切り抜けられるのか。
「はい、ちょっと止まって。行き先は?」
「この先の…」
「ふん、怪しいところはないな、行ってよし」
俺たちは見事に最後の検問を突破し、胸を撫で下ろした。
「やったぞ!ヒャッホウ」

「おい、あり得ねーだろ。この校正ミス」
平成30年6月29日初版発行
ちょさ  むう
母恋しゃ  株式会社SSG
その他
公開:18/06/29 15:09
更新:18/06/29 15:14

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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