黒いビロード

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黒いビロードに月の光が波打つ。反射の具合から、黒いビロードの恐ろしくなめらかでやさしい手触りがわかる。目の前に大きく広がる黒いビロードだけが、私をあたたかく包み込んでくれるような気がした。

人間関係のいざこざとそれに反応してしまうことにはもう疲れた。とても疲れているのに、何日も眠れていない。布団の中、まんじりともせず天井の色が変わるのを毎日見ていた。近ごろはまた、掛け布団は石のように重く、敷布団は砂利道のようにでこぼこになった。布団から出て街へ行くと、人が何気なくこちらを見た時の視線、紫外線、憂鬱感で、肌の内外を針で刺されているような感覚になった。

私は黒いビロードにくるまり眠りたかった。靴を脱ぎ、欄干に手をかけ登る。私は欄干を蹴った。

川面は一度私を冷たく跳ね返そうとした。だがそれは一瞬だけ。黒いビロードが私をやさしく包む。どこかぬくもりを感じながら私はようやく眠りについた。
その他
公開:18/06/30 02:00

砂塵

読んでいただきありがとうございます。
話のおもしろさ云々はひとまず置いといて、とりあえず一本完結させることを重視して書いてます。
朗読ラジオ「月の音色リスナー」です(^o^)/
低浮上中なのでコメント返し遅れるかもですが必ずお返しします。

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