イモ焼酎ロックの氷抜き

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ジイちゃんが死んでサボテン畑を継いだ。
世界一の大農場だ。うちではこの星の必要量の3割の水がとれる。
ヒスイ色の上質な水を世界の金持ちがこぞって買いに来る。
売りは水だけじゃない。良質な蒸留酒も製造している。
サツマイモ、ソバ、アカザ、カラスウリ、リュウゼツラン。乾燥に強い植物はうまい酒になる。
中でもイモ焼酎はじいちゃん自慢の逸品だ。

『おい、イモ焼酎のロックをくれ。氷抜きでな』
じいちゃんはそう言って俺に大ぶりなロックグラスを差し出したものだ。
サボテン水が豊富な我が家では氷も使い放題なのに、いつもじいちゃんは『氷抜き』。ストレートとは言わない。
ずっと不思議だったが大人になり、じいちゃんのロックグラスで飲んでみてわかった。

酒が甘く喉をすべりおりる。残るのは不思議な余韻。
丸く削った氷のようにグラスの中に水の星が浮いて見える。
いつまでも融けない母星への郷愁をゆっくりと味わった。
SF
公開:18/06/29 11:51

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