オープンガーデンへようこそ

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その家には、発明家であり植物学者であり家具職人であり料理人である、一人の男が住んでいる。
中は彼の様々な活動による一見なんの関連もなさそうなもので溢れ返っていたが、その実どれもが何かと結びついており、いつも絶えず人々が門戸を叩いていく、不思議な家であった。

ある日彼は大学での講義のあと、庭の北側に小さな花壇を作った。彼は花壇に豊かな土を入れ、肥料を用意し、水を撒いた。囲いはせず土地のみを整えて、いくつかの種をあちこちに蒔いた。
手伝っていた学者仲間は、それを見て不思議に思った。花壇の面積のわりに、蒔いた種が少なすぎたからだ。
「田丸くん、今度はどんな植物を生み出したんだい?」
「まだわからないんだ。種はこれからやってくるからね」
そう楽しそうに笑う彼の指差した先ではすでに花まで咲かせている彼の種に見え隠れしながら、ヒョコヒョコと歩いてきたいくつもの種が、自ら土へと潜っていく姿があった。
その他
公開:18/06/28 19:41
田丸雅智先生

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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