シェフはアンドロイド

予約の取れない店で有名なレストランがあった。

和洋中、多国籍料理が味わえるのだ。
計算つくしされた料理のレシピが、シェフにプログラムされている。シェフはアンドロイドなのだ。調味に寸分の狂いもない。さらに厨房の料理人たちにも信頼が厚い。

その日、夫婦の結婚記念日にと、予約していた客の男が、料理に感激しシェフを呼びつけた。
「素晴らしかった。こんな料理を味わったのは、生まれて初めてだ。妻も大喜びだよ」
「ありがとうございまス。光栄でス。スタッフたちの熱意も褒めてやってください」
「こりゃ参った。アンドロイドとは思えない。この店にふさわしいシェフだ」
シェフは帽子を取って深々と頭を下げた。客は帽子を取った頭を見て、首をかしげた。
「その赤いボタンは何かね」
「いいね！ボタンです」

店が閉店すると、オーナーはシェフの動力をオフにした。
「今日は１３２いいね！か。レシピを増やさないとな」