ジャズラムネ

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「何? それ」
同僚が私の手元を覗き込んだ。
「ジャズラムネ」
さまざまな色の透きとおった飴でコーティングされたラムネ菓子は、甘い炭酸味だ。口に入れるとシュワァァァと長時間、絶妙に溶け続ける。同時に、気分や体調に合ったジャズボーカルが、いつでもどこでも私の全身を包む。

時に激しく、時に囁くように声は体や心にスーッと沁み渡り、マッサージのよう。楽器もいいが人の声にひたりたいときも多い。
歌のタイトルや内容のせいか、よく眠れたり別れた恋人が自分の元に帰ってきたり、といいこともあった。

同僚にジャズラムネをあげた翌日。
「今朝は会社に行くのがいやでいやで。けど、あれ食べたらなぜかやたらと電車に乗りたくなった」
自分もジャズラムネを買う、と彼女は目をキラキラさせた。
「よかったね。流れたの《A列車で行こう》かも」

食べ過ぎて虫歯になったとは言い出せなかった。
《虫歯が治る歌》はないようだ。
ファンタジー
公開:18/06/26 10:03
更新:18/06/26 12:08
炭酸JAZZ

UKITABI

ショートショート初心者です。
作品をたくさん書けるようになりたいです。

「潮目が変わって」(プチコン 海:優秀作)
「七夕サプライズ」(七夕ショートショートコンテスト:入選)
「最高の福利厚生」(働きたい会社 ショートショートコンテスト:入選)
選出いただきました。

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