幻想動物見聞録・紫織の場合

私、無人駅が好きなんです。線路がただまっすぐに続いていて、他にはなんにもない。静かで、時間が止まったような所。そこで一人で過ごすのが私の趣味でした。なのに、あの日降りたら何がいたと思います？骸骨です。それが身動きしないで、じっと前を向いて座っているんです。電車は走り去ってしまうし、もうショックで気絶してもいいはずなのに、私ったら動転して隣に座ってしまったんです。だけど、そのまま特に何も起りませんでした。ただ雲雀が遠くで鳴いて、穏やかで…。私も慣れてきて、「いつからいるんですか？」って話しかけました。勿論返事はありませんよ？ただ、雲雀が肋骨の中に入り込むと小首を傾げて胸に手を当てる仕草が少し可愛かった。…ひょっとしたら、この人は自分が化石になってしまったことも知らないのかもしれないなと思いました。骨だけになってもこの人はずっと待つものがあるんだ。
先生。それを少し羨ましく思う私は、変ですか？